メイクの技にも人生観

ある有名なメイクアップアーティストに会う機会があった。

「いつも左側からアイライン引いてない？」

ズバリ、その通り。右側を描くのが苦手だからだ。

しかしメイクは「苦手だと思っている側」をはじめにすると成功すると伝授された。

目からウロコ。「苦手な方から先に」、「不得意な家事から先に」、「気が乗らない仕事から先に」。何事もこのように取り組んでいたとしたら、人生はどんなにバランスよく、心穏やかなものになっていたことだろう。

でも、それをするのはこれから先も至難の業だろうな……。

小さいころから40年以上、ごはんはいつもいちばん好きなおかずから食べていった結果、出来上がっている私なのだから。

文・関千里　絵・田上千晶