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いのちを調理

肉の低温調理法が広まりつつある。低温からじっくり時間をかけて肉を温めていくことで、肉を驚かさず、旨味を逃さず、美味しく調理できるから。肉も数日前まではいのちあるものの一部であったのだし、急激な熱さで焼かれるより、徐々に熱せられていった方がきっと衝撃が少なく萎縮しないから美味しくなるんだろうな…とか思ってしまう。私たちは他の生き物や動物のいのちをいただかないと生きていけないので、申し訳ないと思いながらも、いのちをくれたものたちに感謝しつつ調理し、食しているのだが、未だにどうしても調理に抵抗がある生き物がある。それはアサリ。アサリはスーパーから買ってくると塩水に入れて塩抜きをする。その様子をしばらく見ていると、はじめは殻の中に隠れていた二つの管がニュッとでてきてピューと水を吐く。そのうちわらわらと他の貝も管を出し、みんなで私に挨拶してくれているよう。よく見ると込んだ柄の殻はひとつとして同じ模様のものはいない。うずらの卵同様、その模様は天然のアートだ。その話をしたら、イラストレーターの田上さんは「アサリの塩抜きは‘飼育’です」と。仕事柄、その模様に見入ってしまうことがあっても、名前などつけてはいけないと言う。そして、私と同じく生きたままのアサリやシジミを熱湯の中に落とす時は目を背けてしまうのだとか。偶然、最近拝読した平野啓一郎さんの小説にもシジミの飼育に談義するシーンがあった。きっとみんな同じこと考えてる。だからといって救われることのないモヤモヤを抱えながら、生きるために今日もまた、いのちを調理する。

  文・関千里 絵・田上千晶





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