体温計をお願い!

忙しさと不摂生がたたって高熱を出した。
フリーランスでの仕事&育児は休みたくても休めない。そんな潜在意識のせいか倒れて起き上がれないなんてことは数年に1度しかない珍しいことだ。
私の動揺をよそに、幼児のチビが倒れた私のまわりをウロウロしている。
急激に熱が上がったため、頭痛がひどい。いったい何度あるのか……。
「た、体温計。わかる? もってきてくれる?」
ダメ元でチビに聞いてみる。「わかった~」と、チビ。
が、持ってきたのはメジャーだった。
私の体に小さな手を回し入れ、何やらウエストまわりを測っている。
「すうじがいっぱいで、よめないなあ」。
私の頭痛はますますひどくなった。「頭がいたいのっ。お腹じゃないのっ」。
すると、チビは私の顔をじぃ――と見て、
「ここに、ぶちゅけたあとがいっぱいある。だからいたいの?」
私の頭の痛さはマックスになった。「それはシミなのっ!」

文・関千里 絵・田上千晶


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