真夜中の再会

夜中の2時に鏡を見ると、そこには自分の死に顔が映っている――。

これは、子どもの頃に流行った怪談。作り話と分かっていても、夜中にトイレに行くのは恐怖に震える一刻であった。洗面所で手を洗う時は、できるだけ鏡を見ないように、「顔をあげたらそこに……」と思うだけで、もう一度トイレに行きたくなってしまう。
 そして大人になり、夜中の2時は闇の時間ではなくなった。お仕事真っ最中ということもある。それでも、たまたま洗面台に立ったときが1時58分だったりすると、あの恐怖の思いが蘇ってくる。2時になる前にそそくさと作業を済ませ、洗面室の戸を閉めたりするのであった。
しかし先日、夜中にふと目が覚め、寝ぼけたまま薄暗い洗面台の鏡の前に立ってしまった。時刻はちょうど2時。しまった、鏡を見てしまった。と、思ったらなにやら懐かしい顔がそこにあった。
「おばあちゃん!」
 鏡の中に懐かしい祖母の顔が映っていた。100歳の手前で天寿を全うした祖母がまだ元気だったころの顔だ。でも、それは紛れもない、薄暗い照明が照らす私の顔であった。遺伝とはすごいものだと夜中に感心してしまった。
 その数日後、さらに驚くべきことがあった。徹夜明け。朝の光の中、鏡に映っていたのは、ああ、懐かしい……
「おじいちゃん!」

文・関千里 絵・田上千晶




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