贈り物の時間


お世話になったあの人へ、何を贈ろうか。
相変わらず今回も悩んでいる。話題のお取り寄せ品は使い古した策だし、実用を狙った電化製品もネタが尽きてしまった。さてどうしよう。皮肉なことに、何でもない時に、いい贈り物がひらめいたりする。それをメモしたはずなのだが、そのメモも記憶もどこかにいってしまった。
悩むこと2週間。気にかけていた時間は100時間以上。
そして、たどりついたのは1枚のハンカチ。専門店で生地から選び、贈る方のイニシアルに加え、欧文で一言「heartfelt(心からの)」を小さく刺繍してもらったのだ。悩み抜いた末のシンプルかつオーソドックスな贈り物であった。

そんなことがあった数日後、今度は別の友人から私が贈り物をいただいた。それは1枚のハンカチだった。やさしい色の無地にワンポイントの刺繍がなされていた。そのモチーフは私の好きな動物。とてもシンプルな贈り物だったけれど、そこにたどりついた時間を思い、私は心から有難い気持ちになった。

 文・関千里 絵・田上千晶

人気の投稿