東京ベランダ花鳥風月
ある朝、バルコニー越しに外の景色を眺めながらダイニングで朝食をとっていた。
ティーカップを手に顔を上げたら、なんと巨大な鷺と目が合った。
一瞬「ここどこだっけ? 旅先?」と、自分の所在が分からなくなった。
鷺はわが家のバルコニーの水槽で泳ぐ金魚を狙い、手すりにとまっていたのだ。
環境崩壊でエサを求めて山の動物が人里に降りてくる現象は、もはや東京も例外ではない。
ここ数年でマンション4階からの眺望は一変した。以前は民家の屋根と庭の緑の上に空が広がり、小さくても都内の花火が部屋から観覧できた。しかし、その空の隙間は新しいマンションビルの建設により、数カ月ごとに埋まっていって、ついに花火は音だけしか聞こえなくなった。子どもたちが「山びこ」ならぬ「ビルびこ」をやっている。