指一本でポン!
タッチパネルの進化で、何でも「指一本」で直感的に操作できる時代になった。昔観た西暦2054年舞台の映画『マイノリティ・リポート』で、主演のトム・クルーズが宙に現れるデータに指をかざし、指揮者のごとく次々と情報をさばいていたシーンを思い出す。遠い未来のことだと思っていたけど、間もなく現実のものとなってしまいそうだ。
同時に「指一本」は、うっかり者に対し恐ろしい罠が待ち受ける。あっ、という間に間違いメールが同報で関係のない多くの人に送られてしまったり、ネット通販で思議なく無駄な商品を買ってしまったりするからだ。ああ、このメール行かないで! と、パソコンに叫んだこともしばしば(涙)。そんな時、ダイヤル式の電話を思い出す。
若かりし頃、重大告白を決意し電話に向かった。が、ひとつひとつのダイヤルを回す数秒間に妙に冷静になってしまい、最後のダイヤルを回せず受話器を置いたことが何度かあった。あの時「指一本」でスイ~と、メールなど送れていたら、今ごろ私の人生は違うものになっていたかも。
文・関千里 絵・田上千晶