人生につまづいた時は動物を思う

「どうして落書きするの?」スプレーの落書きをされた公共物を指さして子どもが訊ねる。答えに困った。「そうだな、ほら、犬が電柱とかにマーキングするでしょ。ああいう気持ちの人がいるのかも」。とっさにそう答えた。
ヒトの行動が理解できない時、いや、なんとか理解したいと思った時、私は動物の行動を考えるようにしている。「こんな時、動物ならどうしているだろう」と。以前、仕事と子育てに疲れを感じた時にたまたま読んだ、作家の渡辺淳一さんのエッセーを思い出す。ライオンの雄と雌の関係についての内容だった。狩りをするのはすべて雌。雄は縄張りを敵から守り、子孫を残す役割を担って、雌から食料を与えられている。と。派手に着飾り整形を繰り返す男性芸能人を見ると、美しい羽広げ、雌を誘うクジャクの雄を思う。自然淘汰では説明できない性淘汰はヒトにも大いにある。


そしていつか、生きる意味が分からなくなってしまったとしたら……カブトムシのことを思い出そう。卵をたくさん産み落とし、力尽きて世代交代していく小さな虫の儚く、健気な一生を。

文・関千里 絵・田上千晶



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