今日の生き方を玄関で決める

 ユーミンの『DESTINY』という曲に「どうしてなの♪今日に限って♪安いサンダルを履いてた…」というフレーズがある。振られて見返したいと思っていた彼にばったり会った時、こともあろうに貧相な靴だったのだ。こんな劇的な再会は一生に一度もないような気がするが、支度をしていざ出かけようという玄関先で「今日は何を履いて行こうか」と毎日迷う。走るシーンはあるか? 長時間立っていることはあるか? 子どもと公園の土にまみれるシーンは? 夜は宴会入ってないか? 靴を脱ぐシーンは? と、一日のスケジュールを早送りして想像してみる。ふわふわのらくちんブーツを選んだ日は近所の買いものだけ。どうか誰にも会いませんように。きれいなヒ―ルを選んだ日はスケジュール通りにすべての予定が進みますように。途中で間に合わなくなって走りたくても無理だから。
 そんな矢先、仕事の打ち上げで夜の街へ。なんと2次会から合流するメンバーに10年振りの知人が。ユーミンの曲が頭に流れる。元カレではないけれど、見返してやりたい相手だった。今日の靴は? 英国製のかっこいいレースアップシューズだ。これならイケる!2次会の席は座敷。しかし、私は靴を脱ぐことができなかった。
どうしてなの♪今日に限って♪穴が開いた靴下を履いてた…。

 文・関千里 絵・田上千晶





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