大きなバッグに夢をつめて
「もう一度美しいハイヒールを!」。
‘楽さ’に負けてペッタンコ靴ばかりの毎日から脱しようと決起。しかし、一日中ヒール靴を履き続ける自信はない。と、いうことで、大きなバッグにヒール靴を入れ、おしゃれしたい場所の手前で履きかえることに。これはなかなか素敵な案で、疲れず、美しく、気持ちも華やぐ。ハイヒールのおかげで、ショーウインドウに映る自分の脚が長い! そして、急ぐ時や、近所の買い物ではペッタンコ靴に早変わり。楽ちん楽ちん♪ スーパーマンのように、あるいは隠れて寄り道する女子高生のように、駅のトイレでサッとヒール女に変身するのだ。
が、悲劇は突然やってきた。狭いトイレブーズでバランスを崩し……バチャン! ヒール靴が一足便器の中に! スーパーマンから一転、悲惨な片足のシンデレラに。運命の王子様でもこの靴は拾えない(女子トイレだし)。と、泣く泣く靴を洗い、再びバッグにしまった。
文・関千里 絵・田上千晶
文・関千里 絵・田上千晶