男のネイル

　仕事の打ち合わせ中、ある男性営業担当の指に目が釘付けになった。その爪は美しく磨かれ、つるりと輝いていたのだ。一方、まったくケアをしていない私の爪。思わず自分の手をテーブルの下に隠し、打ち合わせはほぼその営業担当の独壇場で終わった。

　数日後、高級住宅地で素敵なサロンを発見。飛び込みでプチエステしちゃおうかと扉を開けたら、何か違和感が。なんと、男性専用のエステサロンだったのだ。

　さらに翌朝。出かけようと身支度をしていたら、香水が切れてしまっていた。そこで、こっそり夫の男性用香水を拝借。これが、案外悪くない。しかもよく見たらオーガニック。密かにいいものを使っていたらしい。

　そして私は思った。男の美容はどんどん進化し、すでにズボラな女の美容を越えた、と。

文・関千里　絵・田上千晶