生返事のしっぺ返し

小さな子どもの話は長い。こちらが取り込み中の時はいつも「ああ、うん。そうだね。そうかもしれないね」と、生返事で返してしまう。それでも「察する」ということなく、自分の気持ちにまっすぐな子どもはさらに会話を畳み掛ける。こちらはさらに「ああ、そうそう。そうかな。そうかもしれないね」を繰り返す。そんな自分の態度を悔いてはいたが、ある時、介護の仕事をしていたという人がラジオでこんな話をしていた。「患者の方々のお話、全員の分全力でお聞きするのは不可能です。でも、ただ一方的に話すことで気持ちが落ち着く方も多く、相手が満足する3大返答は『へえ』『そうなの』『大変だねえ』の3言。ほとんどその3言で返しています。でも、実家で親の話に同じように返答してしまい、『人の話、ちゃんと聞いてんのっ!』と叱られました(笑)」。それを聞いて、引け目を感じていた部分が少し軽くなったような、でも、もやもやしたままで月日は流れた。
ある日、子どもの絵画教室の参観へ。先生の質問に答えるわが子。先生「今日は楽しかった?」わが子「ああ、うん。そうだね」。先生「すごいのできたね」。わが子「そうかな」。先生「うれしいでしょ?」わが子「そうかもしれないね」。先生「………」。

私は自分の生返事を深く反省した。

  文・関千里 絵・田上千晶




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