続・人生につまづいた時は動物を思う

「うちの子殻に閉じこもっちゃって…」と、何事にも無反応のわが子を投げく友人。学校でもまったく発言せず、家でも部屋でじっとしていていて、生きる気力を感じられないのだとか。そんな話を聞きながら、最近わが家にやって来た小さな小さな子のことを思った。うちの子もずっと殻に閉じこもったまま、何日も出て来ていない。
 それは3ミリの赤ちゃんカタツムリ。冷蔵庫に保管していたほうれん草の葉に付いていたのを発見。寒い野菜室で殻に閉じこもり代謝を落として生き延びていた。その後、ケースに入れ、保湿し、野菜をいろいろ入れてみたが、じっとしたまま殻から出てこない。もう5日も。
 翌日思い切って、好物と思っていたほうれん草を取り下げ、青梗菜を入れてみた。すると、殻からニョキッと角が出て、ススススーと葉の上に。青梗菜を夢中で食べ始めた。生きる気力がなかったのではない、体力を温存しながら、自分が活動できるタイミングをじっと待っていたのだ。無駄な体力を使わないようにし、「その時」のためにじっと殻に閉じ籠っていただけだ。青梗菜をむしゃむしゃ食べるカタツムリ。3ミリの小さな生き物に「生きる強さ」を教えられた。

 人間だって「その時」のためにじっとチャンスを待つことだってあるだろう。本人も知らないまま本能で。「生きる強さ」だれもきっと持っているにちがいない。
 

  文・関千里 絵・田上千晶




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