40代の出産③



赤ちゃんの中には未来がたくさんつまっている。たとえ親が高齢であったとしても、どんな人間であったとしてもだ。赤ちゃんの腕の輪ゴムをしたような深いしわ。これはこのしわがのびるほど大きくなりますよ、との成長を約束している。そんな未来の素の生まれたてのわが子を抱いて新年の初詣にでかけたのは数年前。祈ったのはただ一言。「この子がおじいちゃん(おばあちゃん)になってほしい」ということ。20代で産んでいたらきっと思いもつかなかった願いだ。年をとって家族を持ち、長く生きることがいかに尊いことか、40代にして僅かながら悟った。

それが、子どもが大きくなるごとに年々、俗な願いが頭をよぎる。ああ、今年も目の前の欲に溺れずに初心を思い過ごせますように…。そう襟を正して新年を迎えよう。
 
 文・関千里 絵・田上千晶



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