禁酒を解く

願掛けの禁酒を強行。掲げた目標を実力で叶えることは難しいと予測し、神頼みしてみることにした。が、願いが叶わないとこのまま一生お酒を飲めないというのは困るので、神様に許可も得ず、目標の結果が出るまでの2か月間という期間を限定。願いが叶わなくてもこの日を過ぎたら解禁しようと勝手に決めた。ほぼ毎日夕方になると冷蔵庫からビールやワインを取り出していた私。これらを飲まない代わりに一体何を飲めばいいのか、しばらくは飲み物難民状態。滅多に飲まないジュースや炭酸飲料など代替にあれこれ試したため、せっかく禁酒してるのに体重が減るどころか増え始めてしまった。さらに禁酒前に注文していたワインやスパークリングが何箱も届いてしまい、開けられることのない箱が玄関や廊下に積まれ、家族はその隙間から出入りしてた。いつもこんな量を1か月で飲んでいたなんて改めて驚く。なんとか2か月が過ぎ、いよいよその時がやって来るという前夜。「ああ、明日からまたお酒が飲める」。その日のために冷蔵庫に冷やしてあるシャンパンを手でなでながら、なぜか胸がドキドキと高鳴り始めた。さらに息ぐるしくなり、頬が赤らむ。この感覚は…そう、その昔何年も会っていない元彼に連絡してみようかと思ったあの日と同じ。ああ、こんな気持ちすっかり忘れてしまっていた。



ルーティンな毎日に刺激が欲しいと思った時、人はきっと新たな何かを探してしまうもの。でも、毎日当たり前にあるものを無くしてみても、ドキドキが味わえるってことを発見した。

 文・関千里 絵・田上千晶



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