無くなる恐怖

ご褒美をもらう喜びより、持っているものを失う恐怖の方が大きい。行動心理学の講座でそう聞いた。例えば、成績を伸ばそうと頑張る気持ちより、トップの成績を守ろうとする気持ちの方が大きいという研究データもあるそう。本当にそうだろうか、と、その論にピンとこなかった自分。今の自分が持っているものって…もちろん、お宝なんてないし、人に誇れる頭脳もないし、社会的な地位だってない。つまり、失うものなんて何もないから、私はご褒美をもらう方がいいなあ…とお気楽な心持であった。
 数日後、会食の帰り道にイヤリングが片方なくなっていることに気が付いた。酔ってどこかで無くしたらしい。安価なもので、確かネットショッピングで送料対策のためにおまけで買った。そんなものでも、不意に無くすと悔しくなり、道を戻って探しまくったが、見つからなかった。あきらめきれず、帰宅後早速ネットで同じイヤリングを探す。しかし、どこのサイトも売り切れ。そこで思い切ってメーカーにオーダー。もちろん費用も時間もかなりのオーバー。そして、はっと気づいた。確かに一度自分のものになると、「無くしたくない」気持ちが芽生える。

 そして今日、地方に住む友人に頼んだものが届いた。それは首都圏で販売されなくなったスナック菓子。子どもの頃のおやつの定番だったが、大人になって一度も買ったことがなかった。しかし、「もう買えない」となると無性に食べたくなり、わざわざ送料を払って取り寄せている。




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