仕事に取りかかるまでの時間

 目の前に大きな仕事がある。これは、締め切りより3日前に終わらせるよう取り組まなくては危険だ。8月末の夏休みの宿題的緊張感、大人になってもずっと続くことなどあの時の自分には全く想像できなかった。その頃から「宿題は7月中に」との目標を掲げ、大人になった今でも、どんな仕事に対しても毎回同じ気持ちでいるというのに、なぜいつも締め切りギリギリに焦りながら仕上げることになるのか…。今回、初めて締め切り3日前からの自分の行動を記録してみた。
 3日前。なぜか美容院へ。原稿を書こうとしたら、乱れた髪がどうしても気になってしまった。2日前。アイロンがけ。原稿を書こうとしたら、部屋の隅に積まれ、シワになった洗濯物が気になってしまった。前日。シンクの掃除。原稿を書く前にお茶を入れようと思いキッチンに立ったら、汚れが気になってしまった。結局原稿は締め切りはギリギリに…。当日は3時起き、一日がんばって、夕方やっと原稿が仕上がった。記録には他にも、キーボードが打ちづらいと爪を切り、録画済みテレビ番組の整理をし、レシート類の整理もし、次の長期休暇の旅行の手配…と、「なぜ、いまそれをやるっ!」と自分で自分に突っ込みを入れざるを得ない記録ばかり。
 思えば、友人にちゃんとしたメールを送りたいと思った時も同じ動きをしている。いいものをつくろう、いいメールを返そうとすればするほど、なかなかすぐに取りかかれない。これはきっと“まごころ”というものだなと、ついには開き直る。が、もし今回、自分の行動記録なんて取らなければ……間違いなく、とっくに仕事は片付いていた違いない。


  文・関千里 絵・田上千晶








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