チビッ子サッカー

 チビのサッカースクール見学。幼児たちは、池に投げ込まれた餌に群がる稚魚のようにわぁーとボールに集まって、全員もみくちゃになっている。ボールが見えないくらいの塊になって、ゴールを目指すどころか、グラウンドの中を右往左往するだけ。パスもなければ、シュートもほとんどない。しまいにはも塊のままゴール近くに移動し、誰かがうっかりオウンゴール。「これって、サッカーなの?」と、苦笑いの親たち。
 そんなある日、人気バンドのライブへ。5万人が埋め尽くすドームのステージでのヴォーカルのMC。「僕は小学生のサッカーが好きなんです。1個のボールに10人ぐらいがぐちゃぐちゃ集まっている。技術よりも思いの方が強くなりすぎて、うまく伝えられない。そんな様子が大好き。そんな思いを込めた曲を歌います」。その瞬間、私の心が180度傾いた。


翌日はチビッ子サッカーの練習試合。やっぱり今日も子どたちのもみくちゃの塊状態。隣のお兄ちゃんたちの試合はフォーメーションもパスもあってちゃんとした試合になってるのに。
でも、試合ってなんだろう。みんな「勝ちたい」「ゴールしたい」という気持ちは同じだよね。塊になったチビたちの試合でもコーチは真剣で、子どもたちも無我夢中で全員汗だくだ。なりふり構わず、ただボールを追って必死な子どもたちは微笑ましく、いつも誰かにパスを回さなくちゃと焦っているような大人たちは心打ちぬかれ、私は勇気と元気をめいっぱいもらったような気持ちになった。

文・関千里 絵・田上千晶


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