人はなぜ「笑う」

知り合いとあまりにそっくりな人を見た時、「感心する」より思わず「笑って
しまう。人だけでなく、自分が知っているものと同じものを見たり聞いたりするとつい、笑みがこぼれる。大人になって何十年。日常の「笑い」のほとんどは「思い出し笑い」なのではないかと思うようになった。記憶の中の何かと目の前の何かがリンクした時に「くすっ」とするのだ。
そして大人の「笑い」にはもうひとつ。たとえば、新しいアートに出会った時。ミュージアムの通路から展示室に入った途端に別世界。巨大な頭の人が白い空間の中に立っているというアートを見た。体育館くらい広い空間なのになんだか狭そうに。顔の皮膚や表情もリアルで、この巨人が本物で、自分が作り物のミニチュアみたいな気持ちになった。あまりのスケールの大きさと、まったく見たいことのないものを見て、思わす「笑い」がこみ上げてしまった。


 つまり、知っているものを見るとうれしくなって笑ってしまうし、考えもしないものを見るとまた驚いて笑ってしまう。モノマネは笑いを生み出してくれるけど、創作もまた笑いを生み出してくれる。お笑いも芸術なのかな、それとも芸術がお笑いなのかな。

 文・関千里 絵・田上千晶





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