秘密の食卓



仕事しながらの子育ては毎日が忙しい。自分のための時間はほとんどないが、密かな愉しみは家族が寝静まった後の“ほんの一杯”。喧騒から一変しての静寂に、グラス半分のワインをひとり嗜む、一日の疲れを癒すひととき。今日は仕事が多すぎて、食事もままならなかった…だから“ほんのひと口”のおつまみも必要だ。やがて、ひと口のおつまみはちょっとした軽食に。どうせなら、ちょっといいものを口にしたい、がんばった自分へのご褒美だからと、ワインはシャンパンになり、ひと口のおつまみはからすみのパスタになった。自分だけの食事だからはじめてのレシピにチャレンジもしたりして…。
そんなある日の深夜。料理を前にひとり乾杯!と、いう時。トイレに起きてきた家族が一言。「何やってるの?」。ダイニングにはシャンパンに生ハムとチーズ、パテとカルパッチョが並んでいた。家族の夕食より豪華であったことは間違いない。

 文・関千里 絵・田上千晶

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