甘い誘惑

  スイーツが恋しい季節がやってきた。秋の栗やかぼちゃに続き、苺などの季節限定スイーツに加え、クリスマス、お歳暮やお年賀など、何かとスイーツの出番が多くなる時期。続く2月、チョコレートに浮かれるシーズンへと、とにかく寒い季節はあま~いものたちとの濃密なお付き合いに明け暮れるのだ。ところがこの甘いものたち、ひと口だけで済まないのが問題。ひと口食べるとまたひと口、気がつくと一人で一箱開けてしまう…なんていうこともザラだ。さらに、朝起きたときから夜寝るときまでずっと食べ続けたくなってしまうことも。外で人に会った時に「顔がチョコレート色になってる」とか「体からチョコのにおいがする」とまで言われるほどだ。これはまずい。あれこれ手をつくしたが、無理やりやめると、反動でもっと食べたくなってしまう。困った困った。思い切って、都会のようにあちこちチョコのお店がない田舎に温泉旅行に行ってみた。新鮮な空気はそれだけでおいしくて簡単にチョコの誘惑を忘れられた。身体も心も呪縛から解き放たれたその時、なんと目の前に素敵な淡い黒の輝きを放つものが……。それは厳選された小豆による、旅館特製のぜんざいだった。その素晴らしい味わいは美しい山の風景と相まって、私はしばし甘さの感動に浸った。と、いうことでチョコの誘惑から逃れた私は今、あんこの虜になっている。

 文・関千里 絵・田上千晶




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