行ってみないと分からない

 10代の頃の密かな楽しみは街歩き。雑誌の街特集を片手に掲載された店をひとつひとつ見つけていく。学校の帰りに行ったことのない街の駅に降り立って、ひとりでふらふらと歩く。時々住宅地に迷い込んだり、地図の外を冒険してみたり…。ひとりだからこそ、自由に時間も空間も使えるのがいいのだ。あの角を曲がったら何があるのかなとわくわくし、街猫に遭遇して和んだり。コンビニもない、スマホもネットもない時代。写真を撮ることもなく、ただ自分の体にこの体験を刻み込むだけ。しかも中高校生だからお金もない。店のかっこいいデザインの商品を見て、心に焼き付けるしかない。それでも満足だったし、楽しかった。原宿の裏通り、青山、代官山、そして自由が丘、その後ついに横浜に進出。この街はここにしかない店や街並みがあって、イノセントさに旅行気分。ワンデートリップができる特別な街だ。


 大人になって街は目的を持って出かける場所になった。さらに家族の用事や仕事が忙しくなってくると実際に訪れることなく、オンラインで買い物や用事を済ませることが多い。商品を幾つも購入しているのに一度も訪れたことない店すらある。でも、また街歩きを再開させたいと思う。だから、ときにはスニーカーを履き、荷物はリュックに入れて、地図を片手に外に出よう。私が成長しているように、街も成長している。だから、きっとまだわくわくできるに違いないし、何といっても、行ってみないと分からないことがたくさんあるのだから。

 文・関千里 絵・田上千晶




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